電気工事士の資格とは|仕事内容や資格の取得方法も

電気工事士の資格とは|仕事内容や資格の取得方法も

電気工事士とは、電気設備の工事などに関する国家資格です。第一種電気工事士と第二種電気工事士の2種類の資格が存在し、それぞれで作業の範囲が定められています。いずれの資格も試験に合格することで、取得することが可能です。

この記事では、第一種電気工事士と第二種電気工事士の違いを踏まえて、電気工事士の資格について解説します。さらに、電気工事士の収入や資格を取得する方法についても取り上げるため、電気工事士に興味がある方は、ぜひご覧ください。

電気工事士の資格とは?

電気工事士とは、電気設備の工事や取扱に関する国家資格です。電気工事の不備による危険やトラブルを防止するために、一定範囲の電気工作物の工事に従事するには、電気工事士の資格が求められます。

電気工事士の資格には「第一種電気工事士」と「第二種電気工事士」の2種類があり、それぞれ従事できる作業範囲が異なります。どちらも資格取得に特別なスキルや経歴は必要なく、誰でも試験を受験することが可能です。

ここでは、第一種電気工事士と第二種電気工事士の資格の特徴と作業範囲について、さらに詳しく見ていきましょう。

第一種電気工事士

第一種電気工事士の資格取得者は、第二種電気工事士よりも電気工事に関する幅広い作業に従事できます。

第一種電気工事士の資格に合格すれば、第二種電気工事士の作業範囲すべてに対応できる上、さらに大規模な電気工事にも関われます。ただしその分、資格取得の難易度は第二種電気工事士よりも高めです。

第一種電気工事士が従事できる作業範囲は、以下の通りです。

(1)第一種電気工事士免状取得者

  • a. 電気工事士法において規制されている次の電気工事の作業に従事することができます。
    • 1. 自家用電気工作物のうち最大電力500 キロワット未満の需要設備の電気工事
    • 2. 一般用電気工作物の電気工事
  • b. 自家用電気工作物のうち最大電力500 キロワット未満の需要設備を有する事業場(工場、ビル等)などに従事している場合、事業主(当該電気工作物の設置者又は所有者)が産業保安監督部長に当該事業場の電気主任技術者として選任許可申請の手続きを行い、許可が得られれば、電気主任技術者(一般に、「許可主任技術者」といわれる。)となることができます。

(2)第一種電気工事士試験合格者(免状未取得者)

  • a. 産業保安監督部長から「認定電気工事従事者認定証」の交付を受ければ、簡易電気工事(自家用電気工作物のうち、最大電力500キロワット未満の需要設備であって、電圧600ボルト以下で使用する電気工作物(電線路を除く。)の電気工事をいう。)の作業に従事することができます。
  • b. 上記(1)のbと同様に許可主任技術者となることができます。

引用:一般財団法人電気技術者試験センター「電気工事士の資格概要と電気工作物の範囲」引用日2023/1/26

なお、自家用電気工作物に関わる作業のうち、ネオン工事または非常用予備発電装置工事の作業を行うには、別に「特種電気工事資格者」という資格が必要です。

第二種電気工事士

第二種電気工事士は、一般の住宅や小規模電気設備の電気工事に従事できる資格です。第一種電気工事士よりも取得難易度が低いものの、その分作業範囲も限定されます。第二種電気工事士が従事できる作業範囲は、以下の通りです。

  • a. 一般住宅や小規模な店舗、事業所などのように、電力会社から低圧(600ボルト以下)で受電する場所の配線や電気使用設備等の一般用電気工作物の電気工事の作業に従事することができます。
  • b. 免状取得後、3 年以上の電気工事の実務経験を積むか又は所定の講習(認定電気工事従事者認定講習)を受け、産業保安監督部長から「認定電気工事従事者認定証」の交付を受ければ、上記(2)のaの作業に従事することができます。

引用:一般財団法人電気技術者試験センター「電気工事士の資格概要と電気工作物の範囲」引用日2023/1/26

資格取得後、3年以上の実務経験を積むか所定の講習を受講して「認定電気工事従事者認定証」の交付を受ければ、第一種の作業範囲である簡易電気工事にも従事できます。簡易電気工事とは、自家用電気工作物のうち、最大電力500キロワット未満の需要設備かつ、電圧600ボルト以下の電気工作物に関する電気工事のことです。

電気工事士の仕事内容

電気工事士の仕事内容は、大きく分けて「建設電気工事」と「鉄道電気工事」の2種類です。ここでは、建設電気工事と鉄道電気工事それぞれの仕事内容を詳しく見ていきましょう。

電気工事士の仕事内容を知ることで、自身が就職・転職した場合の業務について、より具体的にイメージできるようになります。

建設電気工事

建設電気工事は、公共施設や病院、ビル、工場、住宅など幅広い建築物の屋内・屋外電気設備に関わる電気工事です。コンセントや照明器具、エアコンの取り付けから大型機器の制御回路の点検、電線の敷設まで多種多様な電気工事に携わります。

新しい建物の建築時だけでなく、既存の建物のリフォーム・改築時にも電気工事士は必要で、現場によって幅広い仕事に挑戦できることが魅力です。

また、建設電気工事は他の建設作業と同時並行で行われるのが基本で、複数人のグループで共同作業する機会が多いことも特徴です。電気工事士の基本的な作業範囲だけでなく、ペンキを塗る、セメントで補修するといった、電気工事に付帯する作業を任されることもあります。

鉄道電気工事

鉄道電気工事は、鉄道に関連する電気設備の施工や保守、点検などを通じて、電車の運行を陰からサポートする仕事です。電車に電気を送るための架線や安全な運行に欠かせない信号システム、電力を供給する発電所・変電所など、多様な電気設備の設置や維持に電気工事士が関わっています。

また、駅構内にある照明や自動改札機、券売機、電光掲示板などに関わる設置、保守点検業務も、電気工事の作業範囲です。一口に鉄道電気工事といっても、担当する電気設備や従事する作業内容は多岐にわたります。

電気工事士の収入

厚生労働省が2021年に行った調査によると、電気工事従事者の平均月収は約30.5万円、平均年収は約459.7万円でした。

【電気工事従事者の月収・年収】

月収 年収(ボーナス等込み)
約30.5万円 約459.7万円

出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」

なお、上記結果は電気工事従事者全体における平均値であり、「電気工事士の有資格者」に限定した調査結果ではありません。実際の収入は本人のスキルや勤務先企業によって異なるため、ここで紹介したデータはあくまで参考程度にとどめておくとよいでしょう。

また、電気工事士の収入相場は、第一種電気工事士と第二種電気工事士でも異なります。第一種電気工事士のほうが収入は高い傾向にあり、状況によっては年収500〜600万円の求人も見られます。一方、第一種電気工事士より作業範囲が限定される第二種電気工事士の場合、年収は300〜500万円であることが一般的です。

電気工事士の資格を取得する方法

電気工事士の資格試験は、第一種電気工事士・第二種電気工事士ともに、筆記試験(学科試験)と技能試験で構成されています。

出典:電気技術者試験センター「第一種電気工事士」

出典:電気技術者試験センター「第二種電気工事士」

ここでは、電気工事士資格の取得を検討している方に向けて、試験の出題形式や受験の際のポイントを解説します。ポイントを押さえて対策すれば、特別な経歴や学歴がなくても、電気工事士の資格を取得することは十分可能です。

筆記試験

筆記試験は、第一種電気工事士・第二種電気工事士ともに、四肢択一のマークシート方式で行われます。試験の回によって軽微な違いがありますが、例年100点満点中60点程度を取れれば合格できる可能性があります。

【筆記試験の科目】

第一種電気工事士 第二種電気工事士
  • (1)電気に関する基礎理論
  • (2)配電理論及び配線設計
  • (3)電気応用
  • (4)電気機器・蓄電池・配線器具・電気工事用の材料及び工具並びに受電設備
  • (5)電気工事の施工方法
  • (6)自家用電気工作物の検査方法
  • (7)配線図
  • (8)発電施設・送電施設及び変電施設の基礎的な構造及び特性
  • (9)一般用電気工作物及び自家用電気工作物の保安に関する法令
  • (1)電気に関する基礎理論
  • (2)配電理論及び配線設計
  • (3)電気機器・配線器具並びに電気工事用の材料及び工具
  • (4)電気工事の施工方法
  • (5)一般用電気工作物の検査方法
  • (6)配線図
  • (7)一般用電気工作物の保安に関する法令

引用:電気技術者試験センター「第一種電気工事士」引用日2022/12/28

引用:電気技術者試験センター「第二種電気工事士」引用日2022/12/28

試験問題には、暗記問題と計算問題があります。合格に近づくためには、まず確実に点を稼ぎやすい暗記問題をマスターしておくと有利です。

技能試験

技能試験は、持参した作業用工具で課題を完成させ、提出した課題に欠陥がなければ合格する実技試験です。

【技能試験の科目】

第一種電気工事士 第二種電気工事士
  • (1)電線の接続
  • (2)配線工事
  • (3)電気機器・蓄電池及び配線器具の設置
  • (4)電気機器・蓄電池・配線器具並びに電気工事用の材料及び工具の使用方法
  • (5)コード及びキャブタイヤケーブルの取付け
  • (6)接地工事
  • (7)電流・電圧・電力及び電気抵抗の測定
  • (8)自家用電気工作物の検査
  • (9)自家用電気工作物の操作及び故障箇所の修理
  • (1)電線の接続
  • (2)配線工事
  • (3)電気機器及び配線器具の設置
  • (4)電気機器・配線器具並びに電気工事用の材料及び工具の使用方法
  • (5)コード及びキャブタイヤケーブルの取付け
  • (6)接地工事
  • (7)電流、電圧、電力及び電気抵抗の測定
  • (8)一般用電気工作物の検査
  • (9)一般用電気工作物の故障箇所の修理

引用:電気技術者試験センター「第一種電気工事士」引用日2022/12/28

引用:電気技術者試験センター「第二種電気工事士」引用日2022/12/28

事前に公表される候補課題(第一種10問、第二種13問)のうちの1問が出題されるため、すべての課題を作成して手順を覚えておけば、合格はそれほど難しくありません。

まとめ

電気工事士とは、電気設備の工事や取扱に関係する国家資格です。第一種電気工事士と第二種電気工事士の2種類の資格が存在します。第一種電気工事士は、大規模な電気工事に関する資格で、第二種電気工事士の業務範囲もカバーしています。第二種電気工事士は、一般家庭などの小規模な工事を対象としたものです。

いずれの資格も、試験に合格することで取得できます。電気工事士は、収入が高く、業務の範囲も広い仕事です。工事関連の仕事で収入アップを実現したい場合は、電気工事士の資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。

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