衛生管理者試験とは?受験資格や必要な勉強時間を紹介

衛生管理者試験とは?受験資格や必要な勉強時間を紹介

国家試験の1つである「衛生管理者試験」は、衛生管理者の資格取得を目指すための試験です。第一種、第二種ごとに対応可能な業種は異なるため、希望する業種に適した試験を受ける必要があります。また衛生管理者試験に合格するためには、いくつかのポイントを押さえて勉強することが大切です。

当記事では、衛生管理者試験を受験する上で役立つ試験の概要を紹介します。合格に必要な勉強時間・期間の目安や勉強方法も解説しているので、衛生管理者試験の受験を考えている方はぜひご参考ください。

衛生管理者試験とは?

衛生管理者試験とは、衛生管理者の資格を取得するための国家試験です。衛生管理者は、次の項目のうち、衛生に関する技術的事項の管理を行います。

  • 労働者の危険・健康障害の防止に関すること
  • 労働衛生教育の実施に関すること
  • 健康診断の実施・その他健康の保持増進を目的とした措置に関すること
  • 労働災害の原因調査・再発防止対策に関すること

出典:厚生労働省「衛生管理者について教えて下さい。」

また、上記に加えて週1回以上の作業場等の巡視、必要に応じて労働者を健康障害から守るための措置を講じることも衛生管理者の業務です。

衛生管理者試験は、第一種と第二種に分かれています。それぞれ対応可能な業種に違いがあり、衛生管理者として従事するためには業種に応じた試験を受けることが必要です。

第一種衛生管理者試験

第一種衛生管理者試験で対応可能な業種は次の通りです。

  • 農林畜水産業
  • 鉱業
  • 建設業
  • 製造業(物の加工業含む)
  • 電気業・ガス業・水道業・熱供給業
  • 運送業
  • 自動車整備業
  • 機械修理業
  • 医療業及び清掃業

出典:厚生労働省「衛生管理者について教えて下さい。」

第一種は、物づくり・エネルギー産業・厳しい衛生管理が問われる業種など、専門性の高い分野に対応しています。

試験時間は原則3時間、科目免除者は2時間15分となっています。出題形式は筆記形式、解答の方法は五肢択一のマークシート方式です。

試験科目は下記のように3科目に分かれており、それぞれ出題数が定められています。全科目の問題数は44問です。

  • 関係法令(労働基準法・労働安全衛生法) 計17問
    (うち、非有害業務関連が7問・有害業務関連が10問)
  • 労働衛生 計17問
    (うち、非有害業務関連が7問・有害業務関連が10問)
  • 労働生理 10問

すべての科目を40%以上、全体で60%以上取れると合格できます。

2011年度から2021年度までの10年間の合格率は40〜50%前後です。一般的な資格からすると難易度が高く見えますが、他の国家資格と比較すると難易度は低めであると言えるでしょう。ただし、2016年度以降は合格率が50%を切っている上、年度を重ねるごとに低くなる傾向にあります。

出典:衛生管理ドットネット「国家資格 衛生管理者とは」

第二種衛生管理者試験

第二種衛生管理者試験で対応できる業種は次の通りです。

  • 金融業
  • 保険業
  • サービス業
  • 情報通信業など

出典:学校法人 産業能率大学総合研究所「第2種衛生管理者」

対応業種を見ると、第二種は第一種と比較して汎用性の高い資格と言えるでしょう。

試験の概要はおおむね第一種と同じで、試験時間は3時間、筆記による五肢択一・マークシート方式の試験です。また、試験範囲は異なるものの、試験科目も第一種と同様です。出題数は下記の全30問となります。

  • 関係法令(非有害業務関連) 10問
  • 労働衛生(非有害業務関連) 10問
  • 労働生理 10問

第一種と異なり有害業務関連の設問がないため、問題数は第二種のほうが少なくなっています。合格ラインは第一種と同様、各科目40%以上、全体で60%以上の得点です。

2011年度から2020年度までの9年間の合格率は50%以上です(2021年度は49.7%)。特に2014年度は69.3%の合格率となっており、第一種よりさらに難易度は低くなっています。ただし、合格率は年々下がる傾向にあるのは第一種と同様です。

出典:衛生管理ドットネット「国家資格 衛生管理者とは」

衛生管理者試験の受験資格

多くの国家資格と同様に、衛生管理者試験には受験資格が定められています。衛生管理者試験の受験には、一定の学歴・資格に加え、労働衛生の実務経験が1〜3年以上必要です。求められる実務経験の年数は、学歴や資格の種類によって異なります。ただし、定められた学歴・資格がない場合も、10年以上の実務経験があれば受験可能です。

労働衛生の実務経験として数えられる業務には、看護師・准看護師の業務といった専門性の高いものもありますが、日常的な職場の整理整頓・清掃なども含まれます。いずれの業務も職場で従事していることが、実務経験と見なされる前提条件となります。在宅ワークの場合は実務経験の期間としてカウントされないので、注意が必要です。

たとえば、高校を卒業した人であれば実務経験は3年以上求められますが、特別な業務でなくとも職場の整理整頓・清掃を行っていれば受験資格を得られることになります。また、指定された学歴・資格のない中卒の人でも、10年以上職場の整理整頓・清掃に関わっていれば受験が可能です。受験資格が定められていると受験のハードルが高そうに見えるものの、国家資格としては比較的幅広い人が受験できる資格であると言えるでしょう。

出典:公益財団法人 安全衛生技術試験協会「受験資格(第一種衛生管理者・第二種衛生管理者)

衛生管理者試験は独学でも合格できる?

国家資格の中には専門の予備校に通って勉強する場合もあります。衛生管理者試験にも専門の講習などはあるものの、必ずしも受講しなければならないとは限りません。参考書や問題集などを活用することで、独学でも合格を目指すことは十分可能です。

衛生管理者試験は毎月、地域によっては1か月に複数回開催されているため、何度でも気軽に受け直すことができます。しかし、受験するたびに受験料がかかり、モチベーションの維持も難しくなるので、できれば一発合格したいと考える人は多いでしょう。衛生管理者試験は国家試験としては比較的難易度が低いため、十分な勉強と対策を行えば、一発合格も可能です。

合格するには、すべての科目で一定の得点を取る必要があるため、得手不得手にかかわらず、すべての科目をまんべんなく勉強するように心がけましょう。また、知識の丸暗記ではなく、理由や背景まで含めて勉強すると理解が深まります。

衛生管理者試験の合格に必要な勉強時間

試験の合格を目指すには十分な勉強が必要とはいえ、勉強に費やす時間やかける期間がイメージしにくいかもしれません。そこで、ここでは必要な勉強時間や勉強期間の目安を紹介します。

◆第一種衛生管理者試験の場合

試験までに必要な勉強時間は約100時間、勉強に要する期間は4~6か月程度が目安です。ただし、最終的な勉強時間や期間は、1日に費やせる勉強時間や日数によって変動します。

◆第二種衛生管理者試験の場合

必要な勉強時間は約60時間が目安です。勉強の期間は、出題範囲の広い第一種より短くなります。必要な勉強時間が第一種の6割程度と考えると、勉強期間は3〜4か月程度と見てよいでしょう。

衛生管理者試験に合格するためのポイント3つ

限られた時間の中で試験合格を目指すには、ただやみくもに勉強するのではなく、ポイントを押さえて勉強を進めることが大切です。ここでは、衛生管理者試験に合格するためのポイントを3つ紹介します。

◆自分に合ったテキスト・問題集を選んで勉強する

独学で試験合格を目指す場合、テキストや問題集を活用するのがおすすめです。テキスト・問題集ともに多数市販されていますが、複数のテキストや問題集を購入するより、自分に合った教材を繰り返し取り組むとよいでしょう。自分に合った教材が分からない場合、テキストは薄めで要点を捉えたもの、問題集は解説が充実したものを選ぶと効率的に理解を深められます。

◆過去問で傾向を知る

過去問は、試験本番に近い形式で問題が解けるため、有効活用しましょう。2011年度から2021年度にかけて第一種・第二種ともに衛生管理者試験の合格率は減少傾向にあり、背景として出題傾向の変化が挙げられます。合格を目指すには、過去問を活用し最新の出題傾向をつかむことも大切です。

◆講習会や通信講座を活用する

衛生管理者試験に向けた勉強方法は独学以外に、講習会や通信講座を受ける方法があります。有料ではありますが、講師に直接質問したり添削してもらったりできるため、試験のポイントを押さえた指導が受けられる点がメリットです。独学では不安な場合や、試験直前の仕上げなどに活用すると効果的に勉強を進められます。

まとめ

衛生管理者試験は衛生管理者の資格を取得するための国家試験であり、第一種と第二種の2つに分かれています。業種に応じた受験が可能で、一定の学歴や資格のほか、労働衛生の実務経験が1〜3年以上必要です。

講習会や通信講座を利用して勉強する方法もありますが、参考書や問題集などを活用すれば独学でも十分合格を目指すことができます。その場合、自分に合ったテキスト・問題集を選ぶことや、過去問で最新の出題傾向を把握することが大切です。まずは必要な勉強時間と期間の目安を参考に、合格までの道のりを具体的に構築しましょう。

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