ホイストクレーンは工事現場や工場、倉庫などで広く利用されている機械装置です。操作するためには専門の技能や知識が必要となり、資格を保有する人のみが運転できます。
資格の取得に必要な技能や知識は、教習所の講習などで学ぶことが可能です。実際、現場で活躍している多くの人が講習を受講し、資格を取得しています。
当記事ではホイストクレーンの概要をはじめ、資格の取得に関わる情報やクレーン業務に関する5つの資格について解説します。ホイストクレーンの資格取得を考えている場合は参考にしてください。
目次
ホイストクレーンとは?
ホイストクレーンとは、電気ホイストあるいは電気チェーンブロックを巻上装置に採用しているクレーンの一種です。
ホイストクレーンの一般的な操作方式は、運転者が床上におり、移動させる荷に合わせて自身も移動する床上操作式です。正式には「床上操作式クレーン」という名称がついています。
「ホイスト」と「クレーン」の違い
「ホイスト」と「クレーン」は、両方とも重い荷を吊り上げたり移動させたりするための機械装置ではあるものの、仕様や走行方向などが異なります。
ホイストは、上下にのみ作動する巻上装置で、手動式や電動式などの種類があります。動力は電気・空圧・油圧などを用いるほか、人力で作動させることも可能です。
一方、クレーンは電気や空圧などの動力で荷を吊り上げ、水平に運搬するための装置です。ホイストと異なり、人力はクレーンの動力に含まれません。また、上下だけでなく前後左右の移動に対応する点もホイストとの違いです。
ホイストクレーンの種類
ホイストクレーンの種類は、外観形式によって4つに分けられます。それぞれの特徴は以下の通りです。
テルハ | |
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走行形式 |
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ガーダ形式 |
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特徴 |
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天井クレーン | |
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走行形式 |
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ガーダ形式 |
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特徴 |
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橋形クレーン | |
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走行形式 |
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ガーダ形式 |
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特徴 |
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ジブクレーン | ||
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走行形式 |
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ガーダ形式 |
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特徴 |
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ホイストクレーンの運転に必要な資格
ホイストクレーンの運転に必要な資格には、労働安全衛生法が義務づけた2種類があります。吊り上げ荷重5トン未満の資格と、吊り上げ荷重5トン以上の資格です。
学科講習と実技講習の内容、受講期間などは資格の種類によって異なります。ここでは、各資格の詳細を解説します。
吊り上げ荷重が5トン未満
吊り上げ荷重が5トン未満の資格は「クレーン業務に係る特別教育」を修了すると取得できます。資格の取得によって、床上操作式クレーンや床上運転式クレーン、機上運転式クレーンなどの運転ができます。
具体的な講習内容と講習時間は下記の通りです。
クレーンに関する知識 3h 原動機及び電気に関する知識 3h 力学に関する知識 2h 関係法令 1h 実技教育 4h
吊り上げ荷重が5トン以上
吊り上げ荷重が5トン以上のホイストクレーンを運転するためには、「床上操作式クレーン運転技能講習」の修了が義務づけられています。
5トン以上のクレーンを運転する場合、通常はクレーン運転士免許が必要です。しかし、同講習の修了者は、クレーン運転士免許がなくても床上操作式クレーンを運転できます。下記は、受講希望者が保有する資格及び業務経験に応じたコース区分(受講時間)です。
コース区分 現在保有している資格及び業務経験 16時間
- 移動式クレーン・デリック(旧デリック運転士免許含む)
- 揚貨装置のいずれかの運転士免許所持者
- 小型移動式クレーン・玉掛けのいずれかの技能講習修了者
19時間
- 小型移動式クレーン・デリック・揚貨装置のいずれかの特別教育を修了してから業務経験が6ヶ月以上ある方
20時間
- 上記のいずれにも該当しない方
ホイストクレーン以外のクレーン業務に関する資格5つ
クレーン業務に関する資格には、ホイストクレーンの資格以外にもさまざまな種類があります。複数の資格を取得していれば、就職や転職の際にも有利となるでしょう。クレーン業務に関する代表的な資格は下記の5つです。
- 移動式クレーン運転士
- クレーン・デリック運転士
- 揚貨装置運転士
- 玉掛け技能講習
- 玉掛け作業特別教育
ここでは、それぞれの資格に関する詳細を解説します。
移動式クレーン運転士
移動式クレーンは、必要に応じて建設現場など各所へ移動できるクレーンです。移動式クレーン運転士は国家資格で、あらゆる種類の移動式クレーンを運転することが認められています。
免許の取得を目指す人は、最初に教習所で実技運転講習を受講することが一般的です。同講習では基本運転や応用運転などを学び、修了検定を受けます。
修了検定の合格者は安全衛生技術センター(安全衛生技術試験協会)の実技試験が免除されます。最後に学科試験を受けて合格すると、各都道府県の労働局から免許が交付される流れです。
クレーン・デリック運転士
クレーンの一種であるデリックは、マストまたはブームを備え、別に置かれた原動機つきのウインチからワイヤーを操作する機械装置です。吊り上げ荷重は0.5トン以上で、荷を水平移動できるタイプとできないタイプがあります。
クレーン・デリック運転士免許には「限定なし」「クレーン限定」「床上運転式クレーン限定」があり、運転可能な機械装置がそれぞれ異なります。
吊り上げ荷重5トン以上のデリックを地上操作する際に必要な資格は、限定なしの免許です。クレーン限定免許はデリックを除くクレーン全機種、床上運転式クレーン限定免許はデリックと無線操作式クレーンを除くクレーンにそれぞれ対応しています。いずれの免許も、学科試験と実技試験に合格すると取得できます。
揚貨装置運転士
揚貨装置は、船舶に設置されているクレーンやデリックです。港湾において船舶と陸との間で行う荷役作業に利用します。揚貨装置運転士免許は、船舶上で吊り上げ荷重が5トン以上の揚貨装置を運転するための国家資格です。
資格を取得するために必要な試験は、学科試験と実技試験です。学科試験では、揚貨装置の基礎知識や運転するための力学、関係法令などが問われます。実技試験は教習所で実技教習を受講してから受けることが一般的です。
揚貨装置運転実技教習の修了者は、修了日から起算して1年間は実技試験が免除されます。
玉掛け技能講習
玉掛けとは、クレーンで移動させる荷の取付や取外しなどを行う作業です。玉掛け作業員には、国家資格である「玉掛け技能講習」の修了が義務づけられています。
玉掛け技能講習の基本的な日程は、学科講習2日間と実技講習1日間です。ただし、保有している資格に応じて学科講習や実技講習の受講が一部免除されます。
学科講習ではクレーンに関する知識や玉掛けの方法、玉掛けに必要な力学に関する知識などを学びます。また、実技講習で学ぶ内容は、クレーンの玉掛けやクレーンを運転するための合図などです。それぞれの講習後に実施される修了検定に合格すると資格を取得できます。
玉掛け作業特別教育
玉掛け作業特別教育とは、吊り上げ荷重1トン未満の移動式クレーンやクレーン・デリック、揚貨装置の玉掛け作業をする人を対象とした講習です。ただし、講習を受講した人が吊り上げ荷重1トン未満の玉掛け作業をする場合でも、1以上の吊り上げ能力値があるクレーンを作業することは認められていません。
玉掛け作業特別教育は、学科講習と実技講習で計9時間をかけて行います。学科講習ではクレーンや玉掛けに関する知識や方法、関係法令を学び、実技講習ではクレーンなどへの玉掛けや運転するための合図を学びます。
まとめ
ホイストクレーンとは、荷を上下前後などに移動させるクレーンの一種で、正式名称は「床上操作式クレーン」です。外観形式によって異なる4種類のホイストクレーンの中では、天井クレーンが最もよく使われています。
ホイストクレーンを運転するためには資格が必要です。吊り上げ荷重5トン未満の資格と吊り上げ荷重5トン以上の資格があり、特別教育や運転技能講習の修了が義務づけられています。
ホイストクレーンの資格以外にも、クレーン業務に関わる資格を保有していれば就職や転職に有利に働く可能性があります。当記事を参考に、資格の取得を目指してみましょう。
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