【人材派遣】今後の動向は?現状・生き残っていくための対応を解説

【人材派遣】今後の動向は?現状・生き残っていくための対応を解説

現在の日本では、多くの企業が人材派遣ビジネスを展開しています。労働力の確保について人材派遣に頼っている企業も少なくありません。人材派遣業界は、景気の変動や法規制による影響を受けやすい業界であり、今後の動向を把握しておくことが関係者にとって重要です。

この記事では、人材派遣業界の現状や今後の動向について、詳しく解説します。また、将来的に派遣会社が生き残っていくために必要なM&Aについても取り上げるので、ぜひ参考にしてください。

人材派遣業界の現状

現在の日本では、人材派遣業界にはさまざまな企業が携わっており、人材派遣を活用することで労働力を確保している企業も多くあります。

2008年のリーマンショックが引き金となった世界的な不況の影響を受け、企業による派遣切りなどが増えた際には、人材派遣業界全体の売上は減少しました。しかし、多くの業界で人材不足の状況が続いていたことから、業界の売上高は回復を始めます。コロナ禍前までは労働者の中における派遣雇用の割合は一定水準を維持しており、業界規模の拡大は順調だったと言えます。

しかし、景気の影響を受けやすく、経済が好調なときには規模が拡大し、不調なときは縮小する傾向が強いのが人材派遣業界の特徴です。コロナ禍が始まってから、人材派遣業界はさまざまな影響を受けました。

全体的な求人数の減少

新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって経済活動は大幅に減速し、消費者の需要も低下しました。その結果、新たな人材を必要とする企業が減り、世界的に雇用ニーズが減少している状態です。正社員やアルバイトといった雇用形態に関係なく、全体的な求人数が減少していることは、人材派遣業界にも影響を与えています。

全体的な有効求人倍率は、2021年の半ば頃からやや持ち直しはじめています。しかし依然として活動を一部停止している企業なども多く、コロナ禍前と比べれば有効求人倍率はまだ低いままの状態です。

人材派遣業界においてはさまざまな分野の求人があるため、一概にすべての需要が下がっているとは言い切れません。しかし、社会全体の求人数が減少している状態は、労働力を提供する立場である人材派遣企業にとって厳しいものと言えるでしょう。

宿泊・飲食・イベント関連の採用ニーズ減少

コロナ禍によって大きな影響を受けたものの1つが、宿泊や飲食・イベント関連の業種です。緊急事態宣言下では多くの店舗が営業自粛・時短営業などを余儀なくされ、従来通りの営業活動を行うことが困難になりました。

コロナ禍の影響を特に強く受けたのは飲食業界です。緊急事態宣言下では休業せざるを得ない店舗も多く、自店舗の従業員すらシフトに入れない状態が続いたため、採用ニーズは減少しました。

一方で、新型コロナウイルス感染症の影響が少なくなりつつある現在では、コロナ禍における採用減少のツケが回ってきています。現在の傾向としては、宿泊・飲食・イベント関連の採用ニーズが増えているにもかかわらず人材がなかなか集まってこないという状況です。

飲食宿泊業などは現在でも、感染リスクを恐れた求職者に求人応募を避けられがちになっています。また、コロナ禍による飲食業界への打撃を目の当たりにし、業界全体の先行きへの不安を持っている人も多い傾向です。

医療・物流関連の採用ニーズ拡大

コロナ禍の影響を受け、多くの業界で採用ニーズが減少している一方で、医療・物流関連は採用ニーズが拡大しています。

コロナ禍で医療業界の採用ニーズが拡大したのは、感染症患者の急増によって既存のスタッフだけではサービスの提供が追い付かなくなったためです。医療分野においてはコロナ禍による診療時間短縮といった影響を受ける可能性が非常に低いため、医療関係者の派遣ニーズは今後も増えることが予想されます。

また、新型コロナウイルス感染症の拡大によって外出を控える人が増えたことから、運送業界の需要が急増し、人手不足が深刻化しました。外出を控える傾向は緊急事態宣言が明けた後も続いているため、物流業界の人材派遣需要も増え続けるでしょう。

人材派遣業界の今後

人材派遣業界は、社会経済の状況以外にもさまざまな要素の影響を受けます。ここからは、今後の人口動態や労働市場の変化に伴う人材派遣業界の動きや、どのような対応が求められるのかについて解説します。

少子高齢化による労働力人口の減少

日本は少子化と高齢化が同時に進んでおり、人口減少の問題を抱えている国です。特に労働力人口の減少は大きな問題であり、40年後には4割も減少するとも言われています。

出典:みずほ総合研究所「少子高齢化で労働力人口は 4 割減」

人材派遣業界は人が大きく関係するため、人口減少によって影響を受けることは避けられません。人口の減少に伴って人材派遣業界の需要は少しずつ減少し、業界規模も縮小していくと予想されます。

労働力人口が減少する社会で人材派遣業界が生き残るためには、労働者が高齢者になっても働き続けられる仕組みづくり・社会づくりが求められるでしょう。また、労働力人口が減少しても生産性を落とさないための工夫も必要となります。

人材派遣業界の側も、新たなサービスを生み出すことが大切です。社会構造の変化に伴い、人材派遣業界自体も変化していくことが求められます。

労働力移動の拡大

コロナ禍において、宿泊・飲食・イベント関連の業界は人材が余剰となり、医療・物流関連の業界は人材不足になりました。このことからも分かる通り、同じ時期であっても、労働力のニーズは業界によってさまざまです。そのため、人材派遣業界は人材が余剰となっている業界から人材不足の業界へ、労働力をスムーズに移動させることがポイントとなってきます。

しかし、実際に人材を異なる分野に派遣するのは簡単ではありません。業界が変われば、必要となる知識やスキルなどにさまざまな違いが生まれるためです。

労働力移動をスムーズに行うためには、職業訓練や派遣スタッフの教育制度などが必要となります。人材不足の業界で働くための専門的な知識・スキルについて、事前に体系的に身に着けられる仕組みができていれば、質の高い人材を育成できるでしょう。

事業拡大・多角化の進行

人材派遣会社が今後も継続して事業を展開するためには、事業の多角化や構造の見直しを行うことが大切です。

派遣会社は、派遣先企業から得られる紹介料の一部をスタッフの賃金に、残りの紹介料を利益の元にしています。紹介料はスタッフの賃金のほかに、派遣人材の教育や社会保険料の支払いなどにも充てられるため、派遣会社の利益率は上がりにくいのが実情です。そのため、人材派遣業界は多くの利益を上げているというイメージがありますが、実際にはイメージほどは高い利益を上げているわけではありません。

派遣会社が利益率を改善するためには、業務効率化や無駄の削減を図るなどの工夫が必要になります。また、企業活動を持続化するためには事業の多角化も大切です。人材派遣の事業にとどまらず積極的に事業の幅を広げることで、利益率改善の可能性は高まるでしょう。

派遣会社が生き残っていくために必要なM&A

今後、派遣会社が生き残っていくためには、M&Aにより事業拡大を図っていくことが重要です。M&Aは企業の合併や買収のことであり、現在ではさまざまな業界で活発に行われています。事業の拡大や効率化を図れることから、M&Aは人材派遣業界においても増加傾向です。

最近では、人材派遣業界にも教育制度やスキルを高めるためのカリキュラムを準備することが求められています。M&Aによる事業規模の拡大を進めつつ、人材教育に関する投資を効率的に行うことが、派遣会社が今後生き残っていくためには欠かせません。

また現在、ITに関する知識・スキルを持った人材へのニーズが強まっています。そのため、ITスキルが高い企業やIT人材を持つ企業とのM&Aを進めるケースも多い傾向です。M&Aによって自社にないリソースを獲得することで、派遣人材の質を高めたり、特定業界に特化した派遣会社としてブランディングを行ったりすることが可能になります。

まとめ

今後の人材派遣業界は、少子高齢化による労働力人口の減少や、労働力移動の拡大による影響を受けていくと考えられています。そのため、派遣会社は事業拡大・多角化を推進していく必要に迫られています。派遣会社が競争に打ち勝ち、将来的に生き残っていくためには、M&Aによる事業規模の拡大を進めていく必要があるでしょう。

また、IT化・デジタル化の影響は人材派遣業界とも無関係ではありません。自社のIT化・デジタル化を進めるだけではなく、高いITスキルを持つ人材を集めていくことも、今後の人材派遣業界では必要となるでしょう。

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