消防士になるには?採用試験の内容・求められるスキルを解説

消防士になるには?採用試験の内容・求められるスキルを解説

消防士は、人命や財産を火災から守る重要な役割を果たす職業です。さらに、火災・水難・地震などの災害による被害の軽減、予防にも貢献します。消防士は地方公務員の一種ですが、他の職種に比べて特殊性が高い仕事です。

この記事では、消防士になるにはどのような試験を受ける必要があるのかについて、詳細に解説します。また、消防士として現場に配属される前に入校する消防学校の学習内容・訓練内容や、消防士として働くために求められるスキルについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

消防士になるための流れ

消防士になるには、各自治体が実施している「消防士採用試験」に合格する必要があります。消防士採用試験の受験資格があるのは、高校・大学・専門学校の卒業生です。試験区分は、「高卒程度」「短大卒程度」「大卒程度」と分けられていることが多く、学歴に応じて選択可能です。

消防士採用試験に合格後は、各都道府県や政令指定都市に設置された全寮制の消防学校に入学します。消防学校は、約6か月間の訓練を通して消防士に必要な知識や技術、規律などを学ぶ場所です。卒業後に消防本部や消防署へと配属され、消防士としての実際の業務がスタートします。

出典:総務省消防庁「消防士になるまでの流れ」

消防士になるための採用試験

消防士試験は筆記試験の一次と、面接や身体検査、体力検査を行う二次に分けられるケースが多く、どちらも合格しなければ消防士にはなれません。ここでは、一次試験と二次試験は、具体的にどのような内容の試験なのかそれぞれ解説します。

一次試験(筆記試験)

一次試験では、択一問題と論文問題が出題されます。択一試験は、5つの選択肢の中から答えを選ぶマーク式の筆記試験です。出題される内容は以下の通りです。

数的処理 数理的な知識を用いて問題を解く科目です。中学受験の算数のような、ひらめきや思考力が要求される問題が出題され、難易度が高いとされています。
文章理解 センター試験レベルの現代文・古文・英文から構成されています。
人文科学 世界史や日本史、地理など高校で習う社会から出題され、出題数は少ない傾向です。
自然科学 生物・化学・物理・数学などが出題されます。
社会科学 出題数が多く、経済や政治など高校で習うレベルの問題が出題されます。

論文試験は、出題されたテーマについての受験者の考えを論述する試験です。テーマは自治体や年度によって異なりますが、基本的には社会問題や行政課題についての問題が出題されます。試験対策には、過去に出題されたテーマを参考にしながら、文章を書く練習が重要です。

二次試験(面接試験・身体検査・体力試験)

二次試験は、一次試験合格者のみが受験可能です。二次試験では面接や体力試験などの人物試験が行われます。

面接試験は、個別面接をメインに実施していますが、自治体によっては集団面接の場合もあります。自己PRや志望動機、消防士としてやりたい仕事とその理由などについて質問される傾向です。時事的質問がなされることもあるため、日ごろからニュースや新聞を読み、面接対策をしておくことが大切です。

身体検査では、以下の項目がチェックされます。

  • 身長
  • 体重
  • 視力
  • 色覚
  • 聴力
  • 肺活量

(自治体によって異なる場合がある)

試験の種類によってそれぞれの基準値を設けている場合が多いため、試験を受ける前に確認しておきましょう。

また、体力検査で行われる試験内容は以下の通りです。

  • 反復横跳び
  • 上体起こし
  • 長座体前屈
  • 立ち幅跳び
  • 握力
  • 腕立て伏せ
  • 懸垂
  • シャトルラン

(自治体によって異なる場合がある)

体力検査も身体検査と同様に、自治体ごとに基準を設けており、基準に達した人のみ合格となります。日ごろから運動する習慣をつけて、試験当日に備えるとよいでしょう。

試験合格後に配属される消防学校

消防士採用試験の最終合格者は全寮制の消防学校に入学し、約6か月間、消防士としての基礎的な知識や技能、体力を身につけます。また、学校内では時間やルールがしっかりと決められており、消防隊員が仕事をする上で大切な規律や時間管理も学びます。

消防士は命に関わる危険な仕事も多いため、消防学校では厳しい指導を受けることになるでしょう。厳しい指導を受ける中で、消防士として働くための心得や団体行動のルールなどを学びます。

消防学校での学習内容・訓練内容

消防学校で学習する内容は、座学と実技の2種類に分けられます。座学で学ぶ内容は以下の通りです。

倫理・服装 消防士としての基礎的な心得や規律、制限、禁止行為などを学びます。
消防活動知識 消防業務の制度や概要、消火・救助活動の要領・基本原則などを身につけます。
防災 防火対策や安全対策、震災対策などを学びます。
消防機械・ポンプ 道路交通法や消防ポンプ、車両の安全運行など消防車両に関する基礎知識を身につけます。
査察 火災予防査察の制度や査察対象物の種別、立入検査執行要領など査察に関する知識を学びます。
建築 建築確認の消防同意制度について学び、審査が必要な建物に関する知識を身につけます。

次に実技で学ぶ内容を紹介します。

礼式 消防士に必要な礼儀・規律・品位を身につける訓練です。敬礼や行進などを行います。
体育 消防活動に必要な体力をつけるために、筋トレや剣道、登山などの訓練を行います。
機器取扱訓練 ホースやロープ、空気呼吸器、救助器具など実際に救助のときに使用する機器の取り扱い方法を学ぶ訓練です。
消防活動訓練 防火衣着装から注水まで消防活動の一連の流れを行い、必要な知識や技術を身につけます。
救急訓練 救急活動の際に処置ができるように気道確保や人工呼吸、心臓マッサージなどの方法を学びます。
実務研修 研修先の消防署で実際に業務を体験する訓練です。

消防士になるために求められるスキル

消防士になるためには、以下のような3つのスキルが求められます。

  • チームで協力するためのコミュニケーション能力
  • 業務を行うための体力
  • 過酷な状況にも耐え抜く精神力

過酷な救助現場で仕事をする消防士には、上記のスキルは必要不可欠と言えるでしょう。それぞれのスキルについて、詳しく解説します。

チームで協力するために必要な「コミュニケーション能力」

消防士は、消火活動や救命活動の際には常にチームで行動するため、コミュニケーション能力が重要です。一人でも多くの人を救うためには、チームの方針や出される指示を守りながら、仲間と連携して活動にあたる必要があります。

消防士には、チームのために提案できる力よりも、相手の伝えたいことを的確に読み取る力や必要なことを確実に伝達できる力が求められる場面が多くあります。チームワークを意識できる消防士になると、現場での活躍を期待されるようになるでしょう。

業務を遂行するために必要な「体力」

消防士になるには、人を助けたいという気持ちだけでなく、実際に遂行できるだけの体力も不可欠です。救助活動で使用する酸素ボンベや無線機、ロープだけでも30kgほどあるとされています。30kg以上の装備をつけた状態で、足場の悪い現場で救助を行う必要があり、体力がなければ耐えられない仕事です。

消防士は、過酷な現場でも迅速な人命救助ができるように日々トレーニングを行っています。消防士として働き始めてからも、体力作りが苦にならない人が消防士に向いていると言えるでしょう。

過酷な現場の状況に耐え抜くための「精神力」

消防士として働いていると、過酷な火災現場に遭遇する可能性があります。過酷な現場では、トラウマが残ってしまう消防士も少なくありません。そのため、消防士自身が危険な状況に陥り、精神的に強い負担を感じたとしても、耐え抜けるだけの強い精神力が必要です。

また、災害現場では冷静に物事を判断する力が求められます。消防士がパニックになると、救助活動に支障をきたし、救助者を救えなくなる可能性があります。緊張感のある場面でも、安全な避難経路に誘導したり、救助が必要な人を特定したりと常に冷静に行動できる能力は、消防士に必須のスキルです。

まとめ

地方公務員である消防士になるには、筆記試験と面接試験などからなる採用試験に合格する必要があります。採用試験の合格後は、6か月間にわたり消防学校で全寮制による教育を受けなければなりません。消防学校では、座学で防災などを理論的に学び、実技で消防活動に必要なスキルを習得します。

消防士として働くためには、チームで協力するための「コミュニケーション能力」や、業務を遂行するための「体力」、過酷な災害状況にも耐えられる「精神力」が必要です。消防士を目指す人は、試験対策を進めつつ、これらの能力を身につけられるよう努力しましょう。

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