マシニングオペレーターとは、マシニングセンタを操作して金属・プラスチックなどの素材を加工する技術専門職です。マシニングオペレーターは、段取りから仕事が始まり、データ入力・加工・チェックと、マシニングセンタに関する一連の作業を行います。
この記事では、マシニングオペレーターの仕事内容や年収について、詳しく解説します。さらに、マシニングオペレーターの仕事を目指している人におすすめの資格についても取り上げるので、ぜひ参考にしてください。
目次
マシニングオペレーターとは?
マシニングオペレーターとは、工作機械の一種にあたる「マシニングセンタ」を操作して金属やプラスチックの素材を加工する専門職です。職場によってはマシニングオペレーターを「マシニングセンタオペレーター」「機械オペレーター」と呼ぶこともあります。業務に使用する機械の不具合をチェックする・メンテナンスするなどの業務も、マシニングオペレーターの仕事です。
マシニングオペレーターは主に、自動車工場・半導体製造工場・部品メーカー工場などに勤務します。マシニングオペレーターは製造業界に欠かせない人材として、幅広い職場における活躍が見込まれる人材です。
マシニングセンタとは?
マシニングセンタとは、中ぐり・穴あけ・ねじ立てなどのように多種多様な加工を行える自動工具交換装置の機械です。
自動工具交換装置とは加工作業で使用する工具を事前にセットすると、自動で交換してくれる装置を指します。マシニングセンタは機械の軸構成により、以下に分類が可能です。
立型マシニングセンタ | 切削工具をセットする軸が地面に対して垂直方向に付いたマシニングセンタ |
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横型マシニングセンタ | 切削工具をセットする軸が地面に対して水平方向に付いたマシニングセンタ |
門型マシニングセンタ | 軸が天井側に付き、正面から見た時に門の形状に見えるマシニングセンタ |
5軸制御マシニングセンタ | 直交3軸と旋回2軸の5軸を制御し、複雑な加工を行えるマシニングセンタ |
いずれのタイプのマシニングセンタを使用して加工を行う際にも事前にプログラムを作成し、入力する作業が必要です。マシニングオペレーターは多くの場合、図面を見て適切なプログラムを作成したりマシニングセンタに入力して加工を行わせたりする作業も担当します。
マシニングオペレーターの仕事内容
マシニングオペレーターは段取り・データ入力・加工・チェックなどの工程を経て、完成図面に沿った仕様の部品を完成させます。工程ごとの業務の概要とマシニングオペレーターの役割は、以下の通りです。
段取り
段取りとは、完成図面を確認した上で使用する工具の種類や加工条件を検討し、マシニングセンタを適切に稼働させるためのプログラムを作成する工程です。以下では、段取りで検討する加工条件の具体例を示します。
- 加工順序
- 座標軸
- 回転数、回転方向
- 切削速度、切削方向
- 切削油の噴射量、タイミング
複雑な加工を行う場合は「CAD」「CAM」と呼ばれるソフトを使用し、完成図面やプログラムを作成することもあります。
データ入力
作成したプログラムはパソコン上でシミュレーションした上で、マシニングセンタへと入力します。プログラムの手入力を行う場合は多種多様なデータを注意深く、正確に打ち込むことが必要です。
マシニングセンタは、冶具(じぐ、素材や工具を固定する部品)・素材・工具を適切な位置に固定します。冶具に固定した素材を「スタイラス」と呼ばれる計測器で測定し、プログラムを実行する際の原点を割り出すという作業の流れです。
プログラムの入力やセッティングの段階でミスがあると、仕上がりに影響します。マシニングオペレーターは自分の仕事に責任を持ち、慎重に作業を進めることが重要です。
加工
慣らし運転で入力データやセッティングに問題がないことを確認して、マシニングセンタを実際に稼働させ、加工作業を行います。加工作業は、荒加工・中仕上げ加工・仕上げ加工の順番で行うことが一般的です。
荒加工 | 大径の工具を使用し、形状を大まかに整えるステップ |
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中仕上げ加工 | 小径の工具を使用し、仕上げ代を0.1~0.02mm程度残して加工するステップ |
仕上げ加工 | 専用の工具を使用し、部品の表面を滑らかに整えるステップ |
精度の高い部品を製造する際には、一連の加工作業に20時間以上かかることもあります。ただし、加工作業自体は機械が担当することから、マシニングオペレーターが常時監視する必要はありません。
チェック
チェックの工程では完成した部品をマシニングセンタから取り外し、寸法検査を行います。
寸法検査は、部品に応じた種類の測定機器を適切に使用して行うことが重要です。寸法検査で問題を発見した場合には、加工条件を見直して修正します。
部品の完成後は使用したマシニングセンタの状態もチェックし、故障の兆候にあたる異音や錆び・汚れがないことの確認が必要です。錆び・汚れがある場合はオイルの注入・清掃などを実施し、メンテナンスを行います。
マシニングオペレーター・NC工作機械オペレーターの年収
厚生労働省が運営するWebサイト「job tag」には、さまざまな仕事の平均年収が公開されています。しかし、job tagにマシニングオペレーターの年収は公開されていないことから、類似職種にあたる「NC工作機械オペレーター」のデータを参考にするとよいでしょう。
job tagに公開されているNC工作機械オペレーターの待遇は、以下の通りです。
労働時間 | 168時間 |
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平均年収 | 475万円 |
NC工作機械オペレーターの平均年齢は41歳で、40代には年収500万円以上を得る人も多くいます。近年では女性のNC工作機械オペレーターも増加していることから、性別を問わず活躍が見込まれる仕事です。
マシニングオペレーターを目指す人におすすめの資格
マシニングオペレーターに興味を持つ未経験者を受け入れる求人は少なからずあり、就職・転職するための必須資格は存在しません。しかし、マシニングオペレーターとしての活躍を目指すためには以下の資格取得を目標として、スキルアップに励むことがおすすめです。
機械加工技能士
機械加工技能士とは、職業能力開発促進法をもとに実施される技能士検定を受験し、働く上で必要とされる技能の習得レベルについて国の証明を受けたことを示す資格です。マシニングオペレーターとしての技能を証明するためには、技能士検定の職種「機械加工」・作業「マシニングセンタ作業」を受験します。
技能士検定を受験するためには原則、以下の実務経験基準を満たすことが必要です。
特級 | 1級合格後5年以上 |
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1級 | 7年以上 |
2級 | 2年以上 |
3級 | 不問(実務経験があれば、受験可能) |
受験する人の学歴によっては実務経験基準が緩和されるケースもあるため、事前の確認をおすすめします。技能士検定の試験には実技試験と学科試験があり、両方の合格が必要です。いずれか片方に合格している場合は次回以降、不合格になったほうのみを受験できます。
出典:中央職業能力開発協会「令和6年度 技能検定(前期)実施職種(作業)一覧」
出典:厚生労働省「試験の内容」
CAD利用技術者試験
CAD利用技術者試験とは、CADを適切に利用するための知識や技能を証明する試験制度です。CAD利用技術者試験には以下の種類があり、対象者や試験内容が異なります。
2次元CAD利用技術者試験 | 1級(機械、建築、トレース)、2級、基礎 |
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3次元CAD利用技術者試験 | 1級、準1級、2級 |
これからCADを本格的に学習したい人もしくは就職から3か月程度のマシニングオペレーターに適した試験は上記中の「2次元CAD利用技術者試験・基礎」です。2次元CAD利用技術者試験・基礎は試験時間50分で、50問の筆記試験を受験します。
出典:一般社団法人コンピュータ教育振興協会「CAD利用技術者試験」
出典:一般社団法人コンピュータ教育振興協会「2023年度2次元CAD利用技術者試験概要」
まとめ
マシニングオペレーターは、マシニングセンタに関する専門的な技術を用いて金属・プラスチックの素材加工を行う仕事です。マシニングセンタは、自動車部品やロボット部品、医療機器部品などの製造で使われています。
マシニングオペレーターを目指す場合は、機械加工技能士やCAD利用技術者試験の資格取得をおすすめします。これらの資格の取得により、マシニングセンタに関する知識・技術を企業にアピールすることが可能です。基本的な知識や技術を身につけて、有利にマシニングオペレーターへの就職・転職を進めましょう。
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