切削加工方法の1つである旋盤加工は、おもに丸物の加工物を回転させて、固定した工具を当てて削る加工です。旋盤加工には、汎用方式やNC方式といったさまざまな機械が使われており、旋盤工として働く場合は機械の扱い方を身に付ける必要があります。
当記事では、旋盤加工の仕事内容や作業で扱う機械の種類にくわえて、旋盤工の平均年収やキャリアパスの可能性、旋盤加工の仕事が向いている人の特徴などを解説します。旋盤工への就職・転職を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
旋盤加工とは?
旋盤加工とは、「旋盤」と呼ばれる工作機械を使用して金属や樹脂素材を回転させつつ、切削加工する技術です。切削加工の代表的な技術には、旋盤加工とフライス加工があります。旋盤加工は丸い形状、フライス加工は四角や尖った形状への加工が得意な技術です。
旋盤工とは、おもに旋盤加工によって対象物に穴あけやねじ切りなどを行う職人を指します。ただし、依頼内容によってはフライス盤も使用する必要があるため、旋盤工として働く上では、フライス加工の技術も磨くことが理想です。
旋盤加工の仕事内容
旋盤工のおもな仕事は、旋盤やフライス盤を使用して切削加工を行い、ねじ・ボルト・精密機器の部品などを製作することです。旋盤工は、切削加工作業以外に以下の仕事を担当することもあります。
●設計書の確認と切削条件の設定
旋盤加工で仕様通りの部品を製作するためには、切削速度・回転数・送り速度などの調整が必要です。旋盤工は加工作業を開始する前に設計書を読み込み、加工条件や手順を確認した上、必要な調整を行います。
●プログラムの作成と入力
旋盤工はコンピュータ内蔵の機械を使用し、切削加工を行うこともあります。機械を使用する場合に適切なプログラムを作成・入力することも、旋盤工の仕事です。
●完成品の確認
加工作業の終了後は旋盤工自ら完成品を確認し、「図面通りに仕上がっているか」をチェックします。切削加工では寸法や形状の狂いが人間の命を左右する部品も製作するため、十分な確認作業が欠かせません。
旋盤加工で扱う機械の種類
旋盤工が扱う機械には、大きく分けて汎用方式とNC方式があります。いずれの方式で作業する旋盤工になるかによって要求されるスキルは変化するため、詳細を理解しておきましょう。
以下では、汎用方式とNC方式の概要とメリット・デメリットを説明します。
汎用方式
汎用方式とは旋盤工が「汎用旋盤(普通旋盤、旋盤)」と呼ばれる機械を操作し、手動で切削加工する方式です。汎用旋盤は、おもに以下の部品で構成されています。
- 主軸台
- ベッド
- 心押し台
- 往復台
- 送り装置
- チャック
- 刃物台
汎用方式はNC方式と比較して工数がかさみやすいため、同一の部品を大量生産する際には不向きです。一方で汎用方式には追加加工を行いやすい特徴があることから、仕様変更が発生しやすい部品や小ロットの製品を製作する際に重宝されます。
また、汎用方式は、旋盤工の技術力によって完成品の品質に差がつきやすい方式です。汎用方式で加工を担当する旋盤工には、実務経験を通じて技術力を高める努力が要求されます。
NC方式
NC方式とは、「NC旋盤」と呼ばれる機械に切削加工を任せる方式です。NC旋盤の「NC」は数値制御(Numerical Control)を意味し、縦・横・高さの座標軸や切削工具の種類を指定すると自動的に仕様通りの加工を行ってくれます。
NC旋盤を使用すると、高精度の同一部品を大量生産することが可能です。NC旋盤が切削加工している様子を旋盤工が常時監視する必要はなく、1人で複数台を担当し、効率的に作業することもできます。
ただし、NC方式では切削加工を行う前の準備として、最適なプログラムを作成して入力する作業が欠かせません。旋盤加工中に仕様が変更された場合は、プログラムを作成・入力し直す必要があります。
旋盤工として働く場合の平均年収はどのくらい?
旋盤工の求人の良し悪しを見極めるためには、平均年収を把握しておく必要があります。厚生労働省の調査によると、2019年時点における旋盤工の平均現金給与額・所定内給与額・年間賞与その他特別給与額は、以下です。
きまって支給する現金給与額 | 311,900円 |
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所定内給与額 | 263,100円 |
年間賞与その他特別給与額 | 826,000円 |
●きまって支給する現金給与額
労働契約、労働協約あるいは事業所の就業規則などによってあらかじめ定められている支給条件、算定方法によって6月分として支給された現金給与額をいう。手取り額でなく、所得税、社会保険料などを控除する前の額である。
●所定内給与額
きまって支給する現金給与額のうち、超過労働給与額を差し引いた額をいう。
引用:厚生労働省「賃金構造基本統計調査で使用されている主な用語の説明」/引用日2024/02/05
上記のデータをもとに計算すると、旋盤工の平均年収は、きまって支給する現金給与額の12か月分と年間賞与その他特別給与額の合計で456万8,800円です。約460万円の年収を実現できる見込みがあれば、旋盤工として平均的な待遇を得られる職場と判断して良いでしょう。
ただし、旋盤工の年収水準は都道府県によって異なることから、就職する地域によっては約460万円以下の年収しか得られない可能性もあります。反対に年収水準の高い都道府県を選択して就職すれば、平均年収以上の待遇を狙うことも可能です。
また、一般的に旋盤工の年収水準は、実務経験の長さや技術力に応じて変化します。就職場所を変更できない場合は、入社後にさまざまなスキルを習得したり同じ職場で実務経験を重ねたりすることで、年収アップを狙えるでしょう。職場によっては「機械加工技能士」といった技能証明資格を取得することで、年収アップを狙える可能性もあります。
盤加工におけるキャリアパスの可能性
旋盤工は、日本のものづくりを支える重要度の高い仕事です。日本のものづくり産業が完全に衰退しない限りは十分な技術力がある旋盤工に対し、高い需要が見込まれます。
旋盤工として就職してから一定期間は割り振られた業務に打ち込み、基礎技術や知識の習得に励むことが必要です。基礎技術や知識の習得後はより幅広い業務を任され、多能工へのステップアップを図れるでしょう。
現場の作業をひと通りマスターした後には、工程管理や若手旋盤工の育成などの業務を任される可能性もあります。自分自身の育成した人材が一人前の旋盤工に成長する様子を見ると、大きなやりがいを感じるでしょう。
極めて高度な技術や知識を習得した旋盤工は、独立起業して自分の工場を持つことも可能です。独立起業を目指す場合には、「複雑形状の切削加工が得意」などのように自分自身の武器となる技術や知識があると周囲との差別化を図れます。
旋盤加工の仕事がおすすめの人
旋盤工は未経験からでも挑戦できる仕事とは言え、個人の性格や行動特性による向き・不向きはあります。以下に該当する人は旋盤加工の現場で活躍が見込まれるため、前向きに転職を検討しましょう。
●数字や図形に強い人
旋盤工は、わずかな寸法違いや機械の操作ミスが命取りになる仕事です。数字に強くて依頼された設計を正確に理解できる人は、旋盤工の素養があります。旋盤工は設計図を見て完成品をイメージしつつ作業を進める必要もあるため、図形が苦手でないことも重要な素養です。
●集中力に自信がある人
旋盤加工を正確に行うためには、マイクロメートル単位の調整やプログラムの修正が必要です。集中力に自信があって1つの物事に根気強く打ち込めるタイプの人は、旋盤工に向いています。
●コミュニケーションスキルが高い人
旋盤工はものづくりのチームに属して立場の異なるメンバーと協力し合い、作業を進めることもあります。チームとしての仕事をスムーズに進めるためには、一定レベルのコミュニケーションスキルが必要です。
まとめ
旋盤加工は、汎用方式やNC方式の機械を使って金属や樹脂素材を切削する加工方法です。精巧な部品を作製するためには高い技術力が必要であり、旋盤工は責任感の伴う仕事ではあるものの、その分やりがいにもつながるでしょう。
旋盤工の平均年収は約460万円のため、就職・転職活動で給与面も大切にしたい方は目安にしてください。ただし、年収は働くエリアや実務経験などによっても異なります。将来的には、管理職や独立といったキャリアパスもあるため、将来を見据えて働くことが可能です。
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