キャリア官僚とは?ノンキャリアとの違い・官僚になる方法も

キャリア官僚とは?ノンキャリアとの違い・官僚になる方法も

キャリア官僚は、霞が関にある中央省庁で政策の企画立案や法案の作成などに携わる国家公務員です。テレビの国会中継などで、大臣の代わりに答弁を行う官僚の姿を見たことのある人も多いでしょう。しかし、官僚の具体的な仕事内容などについては意外と一般的には知られていないのが現状です。

この記事では、キャリア官僚とはどのような存在であるのか、分かりやすく解説します。また、キャリア官僚とノンキャリア官僚の違いや、最近の動向についても取り上げるので、ぜひ参考にしてください。

官僚とは?キャリア官僚とノンキャリア官僚の違いも

官僚とは、一定以上のポストにある国家公務員を指す言葉です。国の中枢を担う霞が関にある中央省庁で、国の政策や法律などの策定に携わり、内閣を支える役割があります。

官僚は、国の未来を左右する重要な役割があるため、高度な専門的知識と責任感が求められます。そのため、官僚になるには、非常にハイレベルな公務員試験に合格することが必要です。

官僚は「キャリア官僚」と「ノンキャリア官僚」の2種類に分けられます。キャリア官僚とは、国家公務員総合職試験に合格して、中央省庁に勤務している国家公務員です。一方、ノンキャリア官僚は、国家公務員一般職試験に合格し、中央省庁に採用された人々を指します。

キャリア官僚の試験は、大卒程度試験と院卒者試験があります。総合職試験は、難易度が高く、難関大学出身の受験者が多いのが特徴です。ノンキャリア官僚の試験は、総合職試験よりも難易度が低く、幅広い大学の出身者が受験します。

キャリア官僚とノンキャリア官僚の仕事内容の違い

キャリアとノンキャリアでは、新人の頃の仕事内容には大きな違いはありません。しかし、3年目以降のキャリアとノンキャリアの仕事内容には変化が表れます。

キャリア官僚は、国の政策に関わるプロジェクトに中心的な存在として携わるようになり、閣僚や国会議員と密に連絡を取り合うようになります。また、1~3年のスパンで中央省庁の関係部署内での異動を繰り返すことも、ノンキャリアとの大きな違いです。

ノンキャリア官僚は、事務処理など定例的な業務を担います。キャリア官僚が企画・立案した政策などを、実際に運用するのがノンキャリアの役割です。

キャリア官僚とノンキャリア官僚の出世スピードの違い

キャリア官僚とノンキャリア官僚には、出世スピードに違いがあります。キャリア官僚は、将来の幹部職員候補として採用されているため、だいたい3年目になると国政に関わる仕事を任されます。キャリア組でも優秀な人は本省の最高ポストまで出世することが可能です。「本省局長級」や「事務次官級」に昇進する可能性があり、出世のスピードはキャリア出身のほうが早いと言えます。

一方、ノンキャリアは国政に直接関わる仕事があまりないため、一般的には本省課長クラスの出世が限界とされています。課長以上の役職に就くのはかなり難しく、キャリア官僚よりも出世のスピードは遅いでしょう。

キャリア官僚になる方法

キャリア官僚になるためには、以下の流れに沿って試験や官庁訪問を受ける必要があります。なお、採用試験は春と秋の年2回実施されます。秋試験は、大学3年生や大学院修士1年から受験することが可能です。

第1次試験

4月下旬と10月上旬頃に行われる筆記試験です。春試験では、5つの選択肢から正解を選ぶ基礎能力試験と専門試験が実施されます。秋試験は、基礎能力試験と総合論文試験が行われます。

総合論文試験は、基礎能力試験合格者を対象に評定を行い、最終合格者が通知される仕組みです。

第2次試験 5月下旬から6月上旬と11月下旬頃に行われる試験です。春試験には専門試験と政策論文試験、人物試験が行われ、秋試験では企画提案試験と政策課題討議試験を実施します。
官庁訪問 春試験の最終合格者は7月頃、秋試験の合格者は12月頃または来年の7月頃に志望先の省庁を訪問し、省庁ごとの選考を受けます。

国家公務員総合職試験の受験区分

国家公務員総合職試験には、さまざまな受験区分が設けられており、自身の専攻や出身学部に合わせて選択可能です。ここでは、代表的な4つの試験区分を紹介します。

●法律区分

1次試験の専門試験では、憲法や民法、行政法などから49問出題されます。2次試験は、憲法・行政法・民法・国際法・公共政策から2科目選択して解答する試験です。

●経済区分

1次試験は、経済理論や統計学、財政学などから46問出題されます。2次試験は経済理論が必須で、財政学・経済政策・公共政策から解答する問題を1科目選択可能です。

●政治・国際区分

1次試験では、政治学や国際関係、憲法などから55問出題されます。2次試験は政治学・行政学・憲法・国際関係などから2題選択します。

●教養区分

教養区分は大学3年生の秋に受験可能です。1次試験では教養に関する知識を活かした総合的な判断力の有無を筆記試験で評価します。2次試験は、グループ討議やプレゼンテーションを通して人物の評価を行います。

中央省庁に採用されるために必要な官庁訪問

官庁訪問は、一般企業の選考の際に行われる面接に近いものと考えておきましょう。防衛省や総務省など志望している各官庁から業務内容の説明や面接などが行われます。

官庁訪問には、「訪問カード」を事前に記入して持参します。面接は、踏み込んだ内容の質問が多く、総合職として適性が見られることになるでしょう。

官庁訪問の対象者は、第1次試験と第2次試験に合格し、採用候補者名簿に載っている人です。採用候補者名簿は3年間の有効期限があり、有効期限内の採用試験合格者も官庁訪問に参加可能です。

官庁訪問は、第1次試験の合格発表の数日後からスタートします。終了日は決まっておらず、内々定者が採用予定数になり次第、終了です。

「官僚離れ」でキャリア官僚になりたい若者が減少

最近の若者の間では、官僚離れが進んでいます。総合職試験の申込者数を比較すると、2012年度と2021年度では30.7%の減少であり、2017年度以降は申込者数が持続的に減少しています。

出典:人事院「令和3年度 年次報告書」

また、若年層のキャリア官僚の退職者は、増加傾向です。2020年度における採用後10年未満の総合職採用職員の退職者数は109人です。在職年数別の退職者数の推移を見ると、3年未満・5年未満・10年未満の退職者数が年々増加しており、特に5年未満の退職者数が大きく増加していることが分かります。

出典:人事院「令和3年度 年次報告書」

人事院では、若者の国家公務員離れを抑制するために、給与や待遇の改善、採用制度の見直しなどの対策を行っています。

東大以外の大学出身者が増加

キャリア官僚の採用試験は、難易度が非常に高く、東京大学出身者が多い傾向にありました。しかし近年、キャリア官僚の採用者は、東京大学以外の大学出身者の割合が増加傾向にあります。

2022年度の総合職試験合格者の出身大学は、東京大学が320人、京都大学は165人、早稲田大学は118人と続きます。東京大学出身者がトップであることは確かですが、以前に比べると、その割合は減少してきました。

出典:人事院「2022年度総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験) 出身大学別合格者数一覧」

東京大学出身者が減少した理由は、民間企業に就職する人が増えたためであると考えられています。キャリア官僚は、長時間労働が多いため、勤務環境に不安を感じた学生が民間企業を選択することが多くなっています。

受験年齢の下限が19歳に引き下げ

人事院は、若者の官僚離れの抑制を目的に、2023年から秋に試験が実施される教養区分の受験年齢を「20歳以上」から「19歳以上」に引き下げる制度改定を発表しました。受験年齢の引き下げによって、これまで大学3年生以上しか受けられなかった秋試験が、大学2年生も受験できるようになります。4年制の大学に通っている方であれば、在学中に3回以上試験に挑戦可能です。

人事院が9月21日に発表した教養区分の申込状況によると、申込者は4,014名と昨年度と比べて36%増加し、過去最高の申込者数を記録しました。このような試みにより、官僚離れの抑制に一定の効果が出ていると言えるでしょう。

出典:人事院「2023年度国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)教養区分の申込状況等について」

まとめ

キャリア官僚になるためには、国家公務員総合職試験に合格して、霞が関の中央省庁に配属される必要があります。国家公務員総合職試験は、法律区分や経済区分などの区分に分かれて、大学レベル以上の知識が問われる難関試験です。

かつてはキャリア官僚といえば、大半を東京大学の卒業生が占めていました。しかし、近年は地方の国公立大学や早慶・MARCH・関関同立などの私立大学出身者の割合が増えています。このように、キャリア官僚への間口が広がっていると言えるので、キャリア官僚を目指す人はしっかりと対策を講じて頑張りましょう。

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