【派遣社員向け】抵触日を迎えてからの働き方とは?

【派遣社員向け】抵触日を迎えてからの働き方とは?

派遣社員には、抵触日というものがあります。抵触日を過ぎても働き続けたい場合、抵触日の種類や制限に関する条件、抵触日を迎えたときの選択肢を知っておくと、今後具体的にどのように動けばいいかが分かります。

そこで今回は、派遣社員に向けて派遣における抵触日の基本情報を解説します。抵触日が設けられている理由や個人・事業所に適用される抵触日、抵触日以降の3つの働き方も紹介するので、派遣社員として働いている人はぜひ参考にしてください。

派遣の抵触日とは?

派遣の抵触日とは、派遣社員と派遣先企業との間で結ばれた契約満了日の翌日を指します。抵触とは「法律の禁止事項に反する」ことであり、抵触日は「法律に抵触する日」を意味します。

派遣社員が同じ1つの組織で働ける期間は最長3年間です。2015年施行の改正労働者派遣法によって定められているルールです。したがって、3年間1つの組織で働き続けた派遣社員は、4年目以降は原則として同じ組織で派遣社員として働くことはできません。

出典:厚生労働省「平成27年 労働者派遣法改正法の概要」

例えば、派遣社員のA氏が2022年4月1日からB商社C課で働き始めた場合、抵触日は2025年4月1日となります。抵触日以降、A氏は同じB商社C課では働くことはできません。

派遣社員として働いている人は、法律の禁止事項に反しないように抵触日の日付に留意してください。

抵触日の制限を受けない条件

抵触日の制限はすべての派遣社員を対象としているわけではありません。抵触日の制限を受けない条件が複数あり、いずれかに該当する人は抵触日に関係なく働くことが認められています。抵触日の制限を受けない条件は次の通りです。

  • 派遣元の人材派遣会社と無期雇用契約を結んでいる
  • 年齢が60歳以上である
  • 派遣先企業における1か月の勤務日数が、一般労働者の所定労働日数より少なく、かつ10日以下である
  • 派遣先企業において、産前産後休暇・育児休暇・介護休暇をとる労働者の代替として業務に就く
  • 終了時期が明確な期間限定プロジェクトの業務に就く

人材派遣会社と無期雇用契約を結んでいる人が抵触日の制限を受けない理由は、人材派遣会社の被雇用者として雇用が安定しているためです。

また、育児休暇をとる労働者の代替や期間限定プロジェクトの任務など、安定した雇用につながらないことが明確な派遣業務は抵触日の制限を受けません。

派遣に抵触日が設けられている理由

労働者派遣法では派遣労働を「臨時的」または「一時的」な働き方として位置づけています。臨時的や一時的な働き方では、雇用が長期的に安定しているとは言えません。正社員のように時間をかけてスキルアップやキャリア形成することも困難です。

また、改正労働者派遣法の施行以前は、企業が派遣社員としての安い労働力を長期にわたって確保するケースが少なからずありました。企業側にとってのメリットは、派遣社員にとっては低い給与で働き続けるというデメリットだったことも事実です。

しかし、現在は改正労働者派遣法によって、3年間働いた派遣社員を継続して雇用する場合は企業が直接雇用することが義務付けられています。結果として、派遣社員も正社員として採用されやすくなり、キャリア形成の道も大きく開けました。

出典:厚生労働省「平成27年 労働者派遣法改正法の概要」

抵触日の種類

抵触日には2つの種類があります。個人に適用される抵触日と、事業所に適用される抵触日です。両者の適用範囲は多少異なるため、派遣社員として働く人はそれぞれについて理解を深めることが大切です。

以下では、個人に適用される抵触日と事業所に適用される抵触日について紹介します。

個人に適用される抵触日

個人が1つの組織で働ける派遣期間制限は3年間です。つまり、4年目に入った初日が個人に適用される抵触日に当たります。

制限の対象となる「組織」とは「企業」を意味しているわけではありません。企業内の「課」「グループ」が「組織」に該当します。つまり、制限期日を迎えた派遣社員でも、同じ企業内で別の課やグループに異動すると働き続けることが可能です。

派遣期間制限においては、個人単位よりも事業所単位が優先される点に留意してください。例えば、2022年1月1日から3年間の派遣可能期間を有する企業に、派遣社員A氏が2022年7月から就業したとします。企業の派遣可能期間は2024年12月31日までのため、通常であればA氏の派遣契約は3年未満で終了する計算です。

ただし、企業側が派遣期間の延長を申請すると、A氏は引き続き派遣期間制限まで働くことができます。

事業所に適用される抵触日

事業所の派遣期間制限も個人と同じく3年間です。したがって、事業所に適用される抵触日は、受け入れている派遣社員の派遣期間制限を超えた4年目の初日となります。事業所が派遣会社と労働者派遣契約を結ぶ際は、抵触日の通知義務が課せられます。

個人に適用される抵触日との違いは、事業所は派遣社員を継続して受け入れたいと希望すると派遣期間を延長できる点です。延長手続きとして、事業所内の過半数労働組合などに対し、抵触日の1か月前までに意見聴取をすることが事業所に求められています。

派遣社員が抵触日を迎えたら?

派遣社員として1つの組織に派遣された人は、4年目以降は同じ立場や同じ職場で働くことができません。引き続き派遣社員や正社員として働き続けるためには、抵触日を迎える前に何らかの変更が必要です。

抵触日を迎える派遣社員には、抵触日以降の働き方として主に3つの選択肢があります。部署の異動と派遣先の変更、雇用関係の変更です。以下では、それぞれの選択肢について解説します。

同じ派遣先の別の部署で働く

抵触日を迎えた派遣社員も、抵触日以前に派遣されていた部署から別の部署へと異動することによって、同じ企業で働き続けることは可能です。派遣期間制限が定める組織とは課やグループを意味するため、部署間の異動によって抵触日の制限を回避できます。

例えば、派遣社員A氏がB社の人事課で3年間働き、抵触日を迎えたとします。抵触日を機にA氏は人事課では働けなくなりますが、B社の営業課に異動すると引き続き派遣社員として働くことは可能です。

部署や仕事内容よりも企業自体にこだわりや愛着があり、派遣社員として働きたいという人に適した選択肢です。

別の派遣先で働く

派遣社員には、抵触日を機に別の派遣先で働くという選択肢もあります。

同じ派遣先における部署の異動は、慣れた企業で働き続けたいという人には魅力的です。しかし、部署が変われば仕事内容も変わります。異動した部署では培ってきた経験や専門的なスキルを生かせない可能性もあります。

別の派遣先で働くことは、企業そのものよりも仕事内容にこだわりがある人に適した選択肢です。別の企業であっても仕事内容が類似している部署に派遣されれば、自分の経験やスキルを引き続き生かせるでしょう。

派遣先の直接雇用で働く

派遣先企業が抵触日を迎える派遣社員に引き続き働いてほしいと希望する場合、該当者に対して直接雇用を申し入れる必要があります。派遣社員に対する直接雇用の推進は、改正労働者派遣法の施行時における目的の1つです。

3年間受け入れていた派遣社員を直接雇用することは、派遣先企業にとって人材確保の点で大きなメリットです。すでに実務経験がある派遣社員を正社員として迎え入れれば、新たに人材採用をしてゼロから社員を教育する手間やコストを省けます。

一方、派遣社員にとっても雇用が安定する点は直接雇用のメリットです。直接雇用の雇用形態は正社員のほか、契約社員やパート社員もあります。雇用形態や雇用条件を十分に確認した上で、直接雇用の申し入れに返答することをおすすめします。

まとめ

派遣の抵触日とは、派遣社員と派遣先企業の間で結ばれた契約の満了日の翌日を指します。抵触日には、個人に適用される抵触日と事業所に適用される抵触日があります。

派遣社員が1つの組織で働ける期間は最長3年間で、以降は原則として同じ組織で派遣社員として働くことができません。ただし、抵触日の制限はすべての派遣社員を対象としているわけではなく、設けられている条件のいずれかに当たる場合は抵触日に関係なく働くことが可能です。

派遣社員の抵触日以降の働き方として、同じ派遣先の別の部署で働く・別の派遣先で働く・派遣先の直接雇用で働くといった3つの選択肢があります。抵触日を迎える前に何らかの変更が必要になるため、事前に希望する働き方を決めておきましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA