「個人事業主になるには、何から始めればよいのだろう」と悩む人は少なくありません。会社員や派遣社員として働きながら独立や副業を検討する場合、開業届の提出や税金・社会保険の手続きなど、確認すべきことが数多くあります。
当記事では、個人事業主とはどのような働き方なのかを整理した上で、個人事業主になるためのステップやメリット・デメリット、注意点を分かりやすく解説します。自分に合った働き方かどうかを判断し、独立や副業に向けた準備を進めるための参考にしてください。
目次
個人事業主とは?
個人事業主とは、法人を設立せず、個人で反復・継続して事業を営む人を指す税法上の区分です。会社員や派遣社員のように企業と雇用契約を結ぶ働き方とは異なり、自分で仕事を受注し、収入や税金を管理します。1人で営む場合だけでなく、家族や従業員と事業を行う場合でも、法人でなければ個人事業主に当たります。
税法上で個人事業主になるには、所轄の税務署へ個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)の提出が必要です。所得は売上から必要経費を差し引いた金額で、固定給を受け取る働き方とは異なり、事業の成果がそのまま収入に反映されます。収入の記録から確定申告による納税までを自分で行う点が、雇用される働き方との違いです。
フリーランスや法人との違い
個人事業主とフリーランス・法人の違いは、言葉が指す対象と事業の始め方にあります。フリーランスは組織に属さず個人で働く働き方の呼称で、税務上の区分ではありません。フリーランスとして個人で反復・継続して事業を営めば、税法上は個人事業主に該当します。
法人は、法務局での登記によって設立する、法律上の人格を認められた組織です。個人事業主は開業届の提出だけで始められますが、法人の設立には登記や法定費用、資本金が必要です。納める税金も異なり、個人事業主には所得税が、法人には法人税がかかります。
個人事業主になるには?
個人事業主になるには、事業内容を決めた上で、税務署への開業届の提出や税金・社会保険の手続きを進めます。多くの場合、特別な資格は必須ではなく、初めて独立や副業に挑む人でも、手順を押さえれば準備を進められます。ここでは、個人事業主になるまでの基本的なステップを4つの段階に分けて整理しました。
事業内容や働き方を決める
個人事業主になる最初のステップは、取り組む事業内容と働き方を決めることです。どのような仕事で収入を得るのか、専業で始めるのか副業から始めるのかを整理すると、必要な手続きや準備を見極めやすいでしょう。あわせて事業計画や集客の方法を考えておくと、独立後の収入の見通しを立てやすくなります。
業種によっては許認可が必要で、例えば飲食店は食品衛生法に基づく営業許可、美容室は美容師の資格が求められます。開業前に、自分の事業へ許認可が必要かどうかを管轄の窓口で確認すると安心です。
開業届を提出する
個人事業主として事業を始めるには、所轄の税務署へ開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出します。開業届は、新たに事業を始めた事実を税務署へ知らせる基本の手続きで、提出に費用はかかりません。提出方法は、税務署の窓口への持参、郵送、e-Taxによるオンライン申請の3通りから選べます。
提出期限は開業した時期によって異なります。2026年1月1日以後に開業した場合は、当年分の確定申告書の提出期限までが原則で、2025年12月31日までの開業は従来どおり開業日から1か月以内が期限です。
青色申告承認申請書の提出を検討する
確定申告で青色申告を希望する場合は、開業届とは別に、所得税の青色申告承認申請書の提出を検討しましょう。青色申告には、青色申告特別控除などの節税につながるメリットがあります。控除には複式簿記での記帳が必要なため、会計ソフトを活用して帳簿付けの準備を整えると、負担を抑えられます。
申請書の提出期限は、原則その年の3月15日まで、1月16日以降の開業なら開業日から2か月以内です。青色申告特別控除は、令和8年度税制改正により2027年分(令和9年分)以後、一定の要件を満たすと最大75万円へ引き上げられます。
税金や社会保険の手続きを確認する
個人事業主になると、確定申告の準備に加えて、国民健康保険や国民年金への切り替え手続きが必要です。会社を退職して独立する場合、勤務先の健康保険と厚生年金から外れるため、退職日の翌日から14日以内に手続きを行います。
国民健康保険は住所地の市区町村の窓口で、国民年金は市区町村の国民年金担当窓口または年金事務所で手続きを行いましょう。副業として始める場合は、原則として勤務先の社会保険を継続します。
あわせて、日々の収入や経費を記録する帳簿付けと、翌年の確定申告に向けた準備も必要です。お金の管理をしやすくするため、事業用の銀行口座の開設や会計ソフトの導入を検討すると、確定申告の作業を効率化できます。
個人事業主になるメリット・デメリット
個人事業主には、働き方の自由度が高いというメリットがある一方、収入や社会保障、事務作業の面で注意すべきデメリットもあります。雇用される働き方と比べて利点と負担の両方に違いがあるため、独立や副業の前に両面を把握すると、自分に合う働き方かどうかを判断しやすくなります。
メリット
個人事業主の主なメリットは、働き方の自由度の高さと、税負担を抑えやすい仕組みがある点です。働く時間や場所、仕事の進め方を自分で決めやすく、勤務時間や勤務地が決まっている会社員とは異なる柔軟さがあります。受注した分が収入に直結するため、努力や成果次第で収入アップを目指せます。副業として小さく始め、軌道に乗ってから専業の個人事業主へ移行するのもよいでしょう。
開業に大きな費用はかからず、税務署へ開業届を提出すれば事業を始められます。さらに、事業にかかった費用を必要経費として計上することも可能です。青色申告を選べば2026年分までは最大65万円、2027年分からは最大75万円の青色申告特別控除など、節税につなげられます。
デメリット
個人事業主の主なデメリットは、収入が安定しにくく、税務や社会保障の負担を自分で担う必要がある点です。仕事量や報酬が月によって変動しやすく、毎月決まった給与を受け取る会社員と比べて、収入が読みにくい傾向があります。日々の帳簿付けや年1回の確定申告も自分で行うため、本業に加えて事務作業の手間がかかります。
社会保障の面でも違いがあり、厚生年金や雇用保険のある会社員と比べて、公的な給付が手薄になりやすい点に注意が必要です。国民健康保険や国民年金の保険料を全額自分で負担する点も、労使で折半する会社員との違いです。収入が不安定と見なされやすく、住宅ローンや融資の審査で不利になる場合もあります。
個人事業主になる際の注意点
個人事業主になる際は、開業届を提出するだけでなく、働き方や収入状況に応じた注意点を事前に確認しておくことが大切です。例えば、会社員が副業として始める場合や、退職して独立する場合には、それぞれ確認すべき点が異なります。主な注意点は、次の通りです。
- 会社員の副業として始める場合は、勤務先の就業規則で副業が認められているかを確認する
- 退職して独立する場合は、開業届を提出すると原則として失業手当(基本手当)を受け取れなくなるため、影響を確認する
- 配偶者などの扶養に入っている場合は、開業によって扶養から外れることがあるため、加入先の健康保険組合の規定を確認する
- 課税売上高が1,000万円を超える場合などは消費税の納税義務が生じるため、将来の税負担を見込んでおく
- 業種によっては個人事業税の対象となるため、自分の事業が該当するかを確認する
判断に迷う点や不安がある場合は、税務署や自治体、年金事務所などの窓口、税理士などの専門家に相談しながら準備を進めると安心です。早めに確認しておくと、手続きの漏れや思わぬトラブルを防ぎやすくなります。
まとめ
個人事業主とは、法人を設立せず、個人で反復・継続して事業を営む人を指す税法上の区分です。個人事業主になるには、事業内容を決めた上で、税務署への開業届の提出や、税金・社会保険の手続きを進めます。
働き方の自由度が高い一方、収入の変動や社会保障の手薄さといったデメリットもあるため、会社員との違いを理解しておくことが大切です。副業や扶養、失業手当への影響など、立場ごとの注意点を確認し、不安があれば専門家に相談しながら準備を進めると安心です。










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